オーボエのアンブシュアについて
「オーボエはギネスで認定されるほど難しい楽器!」と良く言われます。
しかし、オーボエを10年以上吹いてきましたが、オーボエの演奏法については他の楽器と比較して難しいとは思えません。
ヴァイオリン、ピアノの方がよっぽど難しそうです…
少なくとも作曲家はオーボエの限界を理解して曲を書いてくれています。
オーボエが難しいのは、リードの影響、楽器の調整の影響を受けやすいからではないでしょうか?
また、リードとアンブシュアとの相性も重要なため、リード製作者=レッスンを受ける先生でない初心者は苦労すると思います。
私も自分の音がまともなだと思えるようになるまで8年かかりました。
アンブシュアと音は密接に関係しています。
時々、「良い音には呼吸が最も大事!」という人がいますが、間違いだと思います。
私も、良い音のためにさんざん呼吸について勉強しましたが、自分の音が劇的に変わった時はアンブシュアを変えたときでした。
呼吸はアンブシュアが整っている前提で 楽に吹く、フォルテやピアノでも変な力が入らない ために役に立つものだと思います。
今回は、オーボエのアンブシュアについて、私の経験をもとに体系的に書いてみたいと思います。
1. アンブシュアと音の関係
アンブシュアとひとくちに言いますが、それを構成する要素は 唇の巻き方、リードをくわえる深さ、口の端を横に引くかまとめるか など非常多いです。
トップ奏者のアンブシュアを外見だけ真似しても、おそらくその人のアンブシュアは再現できないでしょう。
さらに、人によって 唇のやわらかさ、歯並び などが違いますので、同じ効果が出る最適なアンブシュアの形も変わってきます。
これは非常に重要で、ある奏者があなたの体に乗り移ってきて演奏したとしても、その奏者の音は出ないということです。
また、実際に音を出しているのはリードであってアンブシュアではありません。
理想の音を実現するためにアンブシュアでリードをコントロールする必要があります。
では何をコントロールすれば良いのか?
私の経験ではリードの a.振動モード b.閉じ方 c.振動吸収 をアンブシュアでコントロールすることが重要です。
以下でそれぞれについて具体的に説明します。
2. コントロールするリードの特性
a. リードの振動モード
リードは演奏する音程によって、振動する形(=振動モード)が変わります。
振動モードはリードの形状や堅さによって変わってくるのですが、唇が接していることで振動モードも変化すると考えられます。
弦楽器のフラジオレットをイメージするのがわかりやすいでしょうか。
弦の特性は変わっていませんが、指をある位置に置くことで振動モードが変わって違う音が出ます。
これは、リードをくわえる深さでコントロールすることができると考えています。
b. リードの閉じ方
リードはベルヌーイ効果によって振動させられています。
リードの狭い隙間を息が速く流れ、その流れにリードが引きつけられ、弾力で元に戻る、また引きつけられる…ということを繰り返しています。
このベルヌーイ効果の程度は、リードの閉じ方に大きな影響を与えると考えられます。
リードをつぶすと音が出やすくなるのは皆さん経験しているのではないでしょうか?
これは、当然ながらリードを噛む方向の力をかけることでコントロールできます。
c. リードの振動を吸収する程度
リードの振動は唇によって部分的に吸収されます。
リードの糸の部分をくわえるとクロウのように倍音が多い音が出ますが、先端の方をくわえると倍音の少ない暗い音になります。
このように、リードの振動を吸収する程度は音色に大きな影響を与えていると考えられます。
これをコントロールすることができるのは、唇の硬さとリードに当たっている面積だと考えられます。
また、くわえる深さも影響していると考えられます。
3. まとめ
リードをコントロールできるアンブシュアの要素は、
リードをくわえる深さ、リードを噛む力、リードに当たる唇の硬さと面積
の3点だと考えられます。
具体的には、
リードを浅くくわえ、唇をやわらかくして、巻き込みを多くする
⇒ やわらかい(倍音が少ない) and 音程が低い音
リードを深くくわえ、唇を硬くして、巻き込みを少なくする
⇒ 明るい(倍音が多い)音 and 音程が高い音
になると考えられます。
ここで噛む力を取り上げなかったのは、経験的に噛むことで音が悪くなることが多かったためです。
噛む力は最小限にしておくのが良いと思います。
西洋人と比較して日本人は唇が厚い人が多いので、個人的には唇を少し横に引いて硬くした方が良い音が出ると思っています。
いずれにせよ、上記の要素を適切に組み合わせて目指す音が出るようなアンブシュアを模索していく必要があります。